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1.学校教育の場における「医療的ケア」 を要する児童の増加

 在宅医療の技術的進歩と普及、および長期入院や施設入所療育から地域在宅療育へという方向の結果として、日常的に医療的対応を必要としながら在宅で生活する障害児が増加しています。さらに、家庭に閉じこ
もるだけの在宅療育ではなく学校生活が望まれるために、学校教育の場での適切な対応の必要性が増加しています。
 
経管栄養・吸引などの日常生活に必要な医療的な生活援助行為を、治療行為としての医療行為とは区別して
「医療的ケア」と呼ぶことが、関係者の間では定着しつつあります。

「医療的ケア」を必要としているこれらの児童・生徒の大半は病院や施設に併設・隣接していない学校への
通学生です。さらに、肢体不自由養護学校だけでなく知的障害養護学校や病弱養護学校等にも「医療的ケア」
を要する児童・生徒が多数通学しています。

 かつては、このような「医療的ケア」を要する子どもを無理に通学させるのは危険であり訪問教育とする
ことが幸せであるという考え方が、教育・医療の中でありました。しかし、適切な医療的配慮と対応のもと
に学校での集団生活を送ることにより、子どもたちは在宅だけの生活や訪問教育だけでは得られない教育的
効果を得て、精神的成長、社会的成長を示すとともに、より健康が保たれる例の多いことを経験してきました。
「医療的ケア」が必要であっても可能な限り通学による教育を保障する、そのための手だてやバックアップ
体制を、教育・医療・福祉の関係者が協力して整備していくことが必要な時代となっています。

2.家族以外のスタッフによって学校で「医療的ケア」が行われることの必要性

 現状では「医療的ケア」を要する子どもが通学する際に、その子への「医療的ケア」の実施は基本的には
家族が行うこととされています。このために、家族おもに母親が常時子どもに付き添うか別室で待機して
いることを余儀なくされています。家族が病気や疲労などの事情で来られない日には、子どもが欠席せざる
を得ません。これは、教育を受ける権利、親子分離して精神的自立へ向かうための教育を受ける権利を
大きく制限するものです。またこの状況は、家族の過剰負担や兄弟姉妹への間接的な負担を強いることにも
なり、障害を持つ子どもとその家族の生活の安定を目的とすべき障害児福祉の見地からも大きな課題と
なっています。

 さらに、家族の慢性的病気や仕事、兄弟への対応の必要性などの家庭事情により平常から家族の来校が困難である場合には、実施が望ましい医療的ケアを学校では行えないために医療的に好ましくない状態を招いている場合も少なくありません。具体的には、痰がたまっていても吸引ができず苦しい状態のままとなって
いる、経管栄養注入ができないために誤嚥の危険性が大きくありながらあえて口から食事・水分を摂取
させている、水分の補充的注入ができずに水分不足の状態となっているなどの事例が多数あります。
家族以外のスタッフによる実施が可能であれば、このような事態は避けられるはずです。
 このように、医療的な意味においても、また、教育的・福祉的意味からも、「医療的ケア」が学校教育の
場において家族以外のスタッフによって行われることが必要とされています。

3.学校教職員による「医療的ケア」実施の実績と意義

「医療的ケア」を学校生活でも必要とする子どもが増加し、その実施のニードが切迫してくる中で、家族で
はなく学校の教職員おもに一般教職員が「医療的ケア」を一定の条件のもとに児童・生徒に実施する事例が
全国各地で積み重ねられてきました。

  具体的には、学校教職員による「医療的ケア」の実施が適切に安全になされるよう、研修指導・実技指導・
家族や教職員への助言などを行っています。教育現場での「医療的ケア」の切実な必要性を痛切に感じざる
を得ない立場から、各地の多くの本学会会員の医師がこのような支援を行っています。
このような学校教職員による実施の状況と問題点の検討も日本小児神経学会会員により行われてきました。
その直接の実施者はほとんどが、看護師や養護教諭でなく一般教員でした。

 このような取り組みを受けている児童・生徒では、医療的な改善や、呼吸状態の悪化の防止や誤嚥の
事故などの防止が可能になり、元気に通学できる時間が増え、学校にいる時の状態も改善しているのを、
支援を行っている医師は実感を持って経験しています。このことは、教職員が「医療的ケア」を実施する
ことを通して、健康への関心と知識が高まり児童・生徒に寄り添った的確な配慮や対応を行えるように
なったことも大きな要因となっています。教職員による「医療的ケア」の実施が進む中で、総体的には
安全度が高まり在学中の死亡が減った、入院頻度が減少しているなどの状況も認められてきています。
 さらに教育現場からも「医療的ケア」を教職員が行うことにより教育条件の改善や教育活動の拡がり
だけでなく、生徒への理解、信頼関係が深まる、生徒の自発性・主体性が高められるなど、教育の質の
高まりに繋がるより深い意味での教育的意義を示す実践報告も積み重なってきています。


4.「医療的ケア」の望ましい実施者と内容

医療的ケアは、内容(種類)により、また、同じ種類のケアでもその子の状態により、技術的なむずかしさ
や、起きる可能性のある事故の重大さと確率、そしてそのケアに伴い必要とされる判断や対応のむずかしさ
などに、段階があります。「医療的ケア」を一律に扱うのではなく、ケアの内容と子どもの状態、さらに
学校の状況等の、状況に応じた実施者が考えられるべきです。

(1)一般教職員による実施 

 医療的ケアの中で技術的に難しくなく比較的安全に実施できるケアについては、医師や看護師の指導・管理
のもとで条件を整えた中であれば、一般教職員による実施が是認されるべきであると考えます。「医療行為
」の実質的な定義は「医師の医学的判断と技術をもってしなければ人体に危害を及ぼしまたは危害を及ぼす
恐れのある行為」とされています。現在までの一般教職員による多数の実践の中で、「危害を及ぼす」
ような事態が生じていないことは既に述べた通りです。むしろ、一般教職員によるケアの実施により、
誤嚥や痰による呼吸困難など「危害が及ぼされる」事態が防止できているのです。

  平成10年度からの文部科学省による研究事業では、看護師資格のある者が常駐するという条件のもとで
 教員が行える日常的・応急的手当てとして「(1)経管栄養:咳や嘔吐、喘鳴等の問題のない児童生徒で、
留置されている管からの注入による経管栄養、(2)吸引:咽頭より手前の吸引、(3)導尿:自己導尿の補助」
の、3項目があげられています。

 担当教職員はその子どもを良く知り信頼関係も深く持てる立場にあります。関係の深い人によって
「医療的ケア」が適切なタイミングで上手になされ、子どもも安定してケアを受けている場面を私たちは
しばしば経験しています。障害のある子どもへのかかわりにおいては、このような関係性が専門性よりも
重要な意味を持ち得るのです。関係性の確立した担当教職員がケアの一翼を担っていることにより信頼感と
安心感をもってケアを受けることができるという側面が、教育の場でのケアの在り方として重視されるべき
であると考えます。

さらに、「医療的ケア」には、経管栄養注入や導尿など決められた時間に行う定時的なケアと、痰の吸引
など必要な状態の時にすぐに行うべき随時的ケアがあります。空間的に広い養護学校では、緊急性を要する
随時的ケアを少数の看護師に限定していては、迅速に適切に行うことは困難であります。結果として子ども
の苦しい状況が長引くこととなります。定時的ケアでも対象児が多数いると少数の看護師では対応しきれ
ません。このような実質的問題からも一般教職員による実施が行われることが必要であるという実状も、
考慮するべきであると考えます。

(2)看護師による実施

「医療的ケア」の中で、難易度の高いケア、すなわち技術的な面での難しさのあるケア、高度の医療的判断
を必要とするケア、そのケアに伴って生じ得る事故のリスク度が高いケアなどに関しては、看護師による
実施を原則とすべきです。

 多くの養護学校において、健康を維持増進するための適切な配慮や対応を日常的に必要とする重度・重複
障害の児童・生徒が多くなっております。そのような適切な対応がなされるためにも、学校での看護師の
日常的な存在が必要となっています。痰の吸引などの「医療的ケア」も、痰が出やすくするための姿勢の
調節や胸郭運動の促進などの対応と連動して行う必要があり、「医療的ケア」だけを単独に行うだけでは
適切ではありません。このように、日常的な医療的配慮と対応・健康管理を、養護教諭や一般教職員と連携
しながら行い、その中で難易度の高い「医療的ケア」を実施していくスタッフとして、看護師が学校に常に
存在することが望ましい状況があります。そして、医師による指導・管理を受けながら、一般教職員が行う

 「 医療的ケア」を指導・援助していくことも、学校の看護師の大きな役割となります。
訪問看護師・派遣看護師により学校での「医療的ケア」を実施する方式は、現実化しやすい方法であり、
充分に生かされていくべきです。しかし、上に述べたような学校における看護師の望ましい役割や在り方
から見て、訪問看護師・派遣看護師による対応のみで問題の解決を図るだけでは不充分であると考えます。「医療的ケア」を要する児童・生徒が多数通学する学校では、そのケアの全て、とくに随時性を必要とするケアをも訪問看護師・派遣看護師によって全て実施するためには多数の看護師を必要とするという現実的問題もあります。


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