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訪問介護最大手コムスンが、不正行為により介護保険事業者の指定を
打ち切られた問題は、介護という公共性の高い業界で起こっただけに
衝撃が大きい。問題の本質は何か!
第一の問題はコムスンが事業所を設置する際の虚偽申請だ。ヘルパー
の水増しや掛け持ちによって申請し、事業者の開設許可を得ることは
禁じられている。完全な違法行為で、議論の余地はない。
二つ目は不正請求の問題である。事業者は、一ヶ間に提供したサービス
をまとめ、保険者(市町村)に報酬を請求する。保険者は請求書に間違い
がなければ介護者の九割を振り込む。
この請求事務で「間違い」が起きてしまう。単純な「うっかりミス」と、
意図的に水増し請求する「ちゃかりミス」が考えられる。うっかりミス
では、提供したサービスを付け落とし、損する例もかなりある。
一方、ちゃかりミスは計画的なので、損をすることはない。コムスンは
後者であった。
三つ目は、摘発逃れの問題である。不正行為を摘発されそうになると
撤収する手法には、以前から批判があった。折口会長は当初「六万五千人
の利用者のことを考えると閉められない。もう一度チャンスをください」
と訴えていたが、それならこれまでの突然の撤収をどう説明するのか。
「ある日突然ヘルパーが来なくなって困った」という利用者や家族は
たくさんいる。勝手な撤収も強制的な退場も、利用者が困る点では同じ。
四つ目は、サービスを決める介護支援専門員(ケアマネージャー)が
事業者の「社員」であるという問題です。これは介護保険開始当初から
懸念されていた。介護支援専門員は利用者の利益と同時に、会社の利益も
考えざるを得ない。コムスン社員が「プレッシャーを感じていた」と証言
している。利益を上げるよう、上層部からの圧力があったのだろう。
五つ目は、介護報酬が次第に減らされていることだ。開始から六年で、
当初の四兆円が倍の八兆円に迫るまでに急増した介護報酬を何とか抑え
ようと、政府は単価を繰り返し引き下げている。事業者にとっては経営が
益々苦しくなり、利益ばかり追うようになってしまう。
国の監視をより厳しくすべきだという声もある。しかし、これ以上基準
を強化しては、多くの事業者が介護保険市場から撤退してしまう恐れがある。
真剣に介護サービスに取り組んでいる事業者までが巻き添えを食うような
改革は、本末転倒だ。
介護保険を維持し、いわゆる「介護難民」を出さないようにするには、
いたずらに規制を強めるのでなく、企業努力の余地を残すことが必要
だろう。民間事業者に市場を開放し、健全で公正な競争によって介護の
質を高めるというのが、介護保険の「良い点」であり、原点のはずだ。